十一月/楢山孝介
「十一月」
数減るも巨大化していく女郎蜘蛛
雨風に吹かれ散ってく夢ゆめよ
あっという間に魔に墜ちる少年期
ちりとりに飛びこんでくる今日の死蛾
焼かぬのに灰にまみれて道の骸
コーヒーにミルクをそそぐ混ぜる飲む
鴨鴨鴨鴨の隙間に池があり
怪しげなうなぎの脂で腹重し
白波に洗われてゆく父の舟
白波に攫われてゆく僕の骨
月面やカメラの外(そと)に姫がおり
周るのみかぐや故郷に降り立たず
かぐや撮る係累絶えし故郷の地
小春日や予報はどこも「夜冷える」
滞留し濁り澱める日々の澱
寒さ負けザムザ縮んで虫と
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