鬼の左手 (2/3)/mizu K
(1/3)http://po-m.com/forum/i_doc.php?did=140157 のつづきです
さて、炎天とはいえ、日もかたぶけばわずかばかりの乾いた
風が通り過ぎるのですが、足弱の子が杖を持って戸口に現れ
るのはまだ暑さに人の通りもまばらな刻のこと、ちりりちり
りと鈴を鳴らして、壁づたいにそろそろ、緒は隣口まで、次
は塀まで、その次は辻まで、ひと息ふた息つきつつ歩を進め、
通りをきっと眺め、行き倒れの物ごいのまなこに止まる蠅を
どこかぎらぎらした瞳にうつしているのでした
あの子の首からぶらさがっている
あの鈴はいったい何だ
亡父の形見か
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)