鬼の左手 (1/3)/mizu K
ひとつぶのしずくが、ぽおんと空から、落ちてきて、それは
鬼のまぶたにしみとおり、ひとみを濡らし、目からあふれさ
せた、鬼は、目の玉からあふれるものをぬぐおうとしました
が、左腕がないことにはたと気づいてうろたえていたのです
人の朝に起きて方々から笛や太鼓の音、耳には聞こえども今
のいままで姿は見えなかったもの、昼下がりさがった神輿を
担ぐ人びとの足のすきまから垣間見た祭りの景色の正体は、
鬼火、それをみた人は三日を待たずして連れ去られるといい
ます
大路の大門は廃の場と化し、既に人の姿はまれとも見えず、
宵闇のひたひたと背を凍えさせる闇の音に、影の姿におびえ
て閉じこ
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