白熱/佐々宝砂
 
ったし 遊泳禁止だった 俺の育った片田舎の海は それでも少しはきれいだったが 俺はあの海でも泳いだ記憶がない だが俺は小さなころから海で泳いだらしかった 俺は汐に髪をひたし 砂まみれになり 裸で海岸を転げまわった そうしなければならない季節があった 俺は熱っぽかった 断じて微熱ではなく 俺は熱っぽい身体を冷ますために海で泳いだ 海は白かった 白くてそして恐ろしいことには俺よりも熱かった 俺は白熱する海でのたうちまわる 白熱する白熱のなかで白熱する白熱 周期的に白熱の季節が俺を襲った 俺はどうしたらいいか知っていた けれどどうしたいのか知らなかった ただ俺は白熱しなくてはならず 白熱するしかなく 白
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