白熱/佐々宝砂
 
 白熱は目的であり白熱は動機であり白熱は手段であり なお白熱は白熱でしかなく ああ俺はもう何もいらない 洋子も あんたも ホワイトホールから噴き出されるすべても なにもかも どうでもいい 俺を許してくれ 俺を生んでくれたかあさん 自分のことを「俺」と呼んだばあさん 俺は何も生まなかった俺は何も生めなかった 白熱の海に俺は今日も顔をひたす 白熱の海底には白熱の蟹が生きている 白熱の海面には白熱する不在の騎士が浮上し白熱する不在の腕で俺を抱きとめる それが明日か今日か一億年後か俺は知らない 時間さえどうでもいい そうだここには時間さえないんだ
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