書庫で踏む/楢山孝介
喋らなくても考えなくてもいいような
そんな境地にまでは至れなかったから
俺は馬鹿だからまだ人間と
話し合えるなんて思ってるものだから
だからつい話してしまうし
助けてくれるかもなんて思ってしまう
踏まないでほしいし殺さないでほしい
でも俺馬鹿だから
俺が一番ここで多く本を食べたのに
許されるわけがないってわかってるのに
でももしかしたらなんて思ってる
黙って隠れてたらよかったのに
洗いざらい全部喋っちゃってる
俺ほんとはザムザ虫じゃないんだ
ほら喋ってるだろ、体こんなんだけど
幼虫やってたんだ二十年間
なあ殺さないでくれよ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)