書庫で踏む/楢山孝介
俺馬鹿だけど何でもするよ
仲間の死体だって片付けるし
本だっていくらでも探してくるよ
飯だって作るよこいつら焼くよ
こいつら賢かったから
馬鹿の俺みたいなこと出来なかったんだ
賢かったから本能以外は捨てちゃったんだ
俺馬鹿だから考えちゃうんだ
殺されたくないとかまだ生きていたいとか
あんたはここまで俺の話を聞いたんだから
だんだん殺す気も薄れてきてるだろうとか
思ったことまで全部言っちゃうんだ
俺馬鹿だから助かりたいんだ
お願いだよ、殺さないで」
少し情は湧いたがやっぱり踏んだ
潰れる時にあげた鳴き声は
喋らない他のザムザ虫と変わらなかった
吐き気をこらえながら死骸を集めて
外に運びだして焼く頃には
死にたくなかったザムザ虫がどれだったか
見分けがつかなくなっていた
戻る 編 削 Point(2)