書庫で踏む/楢山孝介
亡くなった祖父宅で書庫の整理をしていると
奥にある一番古い棚に
ザムザ虫が大発生しているのを見つけた
古い貴重な文献があらかた喰われていた
あんまり頭にきたものだから
スリッパが汚れるのも構わず踏み潰した
たらふく本を喰った後だからか
連中の動きは鈍かった
飛び散ったザムザ虫の体液で
喰われていない本まで汚してしまった
何十匹と踏み潰した
「殺さないでくれ」と声がした
ザムザ虫最後の一匹が喋っていた
言葉を発するザムザ虫なんて
聞いたことがなかったので珍しく思い
とりあえず話を聞くことにした
「俺は馬鹿だから
俺は馬鹿だから仲間のみんなみたいに
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