ロシアパンを売る少女(reprise)/mizu K
 

いいつたえられているむかし話がある
むかしむかしあるところに
氷でつくられたある高い塔のてっぺんに
それはそれはうつくしい緑の袖のお姫さまが閉じこめられておりました


「ロシアパンを売る少女」
という絵の傑作が
かの古都プラハの国立美術館にある

市でにぎわう人びとの喧噪から
ややはずれた位置に立って
質素な身なりをした少女が
しずかにパンを売っている
彼女の背後には冬枯れの楡と
閉ざされた窓
バルコニーの花をつけていない鉢
石だたみにのらいぬ
こねことこねこがじゃれあって

落ちる日のはやさにまけじと
だれもが足早に歩く
まちかど

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