白い夏/前田ふむふむ
 
き刺す若々しい空気が、
全身の汗腺を塞いでいた。

床が近くに見えるから、わたしは迷わずに、
ひかりを追うことができるのかもしれない。

冷房の送風音に気付いた。
無音を押し倒して、日常が顔をあげる、
擦れた機械音は、泣き声のように全身を覆い、
ひかりが降りそそぐ静かな幻惑をかき消していた。
眠りだす彫刻のような世界。
自由も、帰るべき場所を失って立ち尽くす。
限定されていた名前たちが墜落して、
眼球のなかに押し寄せる。
鬩ぎあう文節。止まらない句読点。

剥きだした意識の底辺から、
逃れるように、羽虫が、散らばる大理石の破片を、
垂直に翔けあがる。
視線は、
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