「ベランダと猫」/ソティロ
ビ温=ぬる}い風にはためいて
彼の顔の上半分に影をつくった
彼の目のなかにはつよい白が残っていて
すこし目眩がした
空は蒼(あお)い
夏の終わりの入道雲が過ぎて
ベランダは暑かった
目が慣れて
それらを見渡して、
そのすべてにひかりが注いでいる
夏の終わりの、高くからのつよい光
すべてのものの彩度が上がって
くっきりとしていた
そんな発見をしたころ
彼は
あの空(くう)にとらわれていることに気付いた
猫はまだガラス窓の向こうで鳴いている
こちら側では蝉の鳴き声がまだ強く聞こえる
乾いた熱風が弱く
川の方から運ばれてきて
洗濯物や木の葉や彼の前髪を
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