「ベランダと猫」/ソティロ
 
族はいつかなくなってしまう
そんなことを考えていた


彼が猫と暮らすのははじめてだった
はじめ、彼と猫は距離を保っていた
お互い接し方がわからなかった
でも彼が眠るとき猫はベッドに上った
彼は猫を寝室から締め出して
すうすうと眠った


そして昼間
彼が猫を触るときには猫は逃げ出すのだった
決まって陽だまりを選んで毛繕いなどをしている
でも腹が減った時には足元へ寄ってきた


ある朝目覚めた時
猫がどこから這入ったのか
彼の枕元で眠っていた
そのとき光に照らされたひげが
白くて


その時にまた彼は泣きたくなった
泣ければよかったのだけど

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