純白恋夢/愛心
 




僕は姫の、微笑む唇の端に、くちばしをさし入れる。
熱いくちづけのつもりだった。

姫君は手紙を置くと、くすくす笑った。
そして、僕を優しく掌にのせ、鳥籠にその手を入れた。
僕は黙って掌から降りた。手をつつくことも、急に飛び出したりもしなかった。
ただ黙ったまま、姫君の掌から離れた。

かしゃん。

彼女は扉を閉め、少し怒った顔をした。
「もう。くすぐったいでしょう」
そしてうっとりと微笑んだ。
「ふふ。私ね、明日の満月の晩が過ぎたら、隣国の王子、メトル様の花嫁になるの」
姫の頬が赤く染まる。
「私、ここから出られるわ。お前もこの婚約は、素晴らしいと思うでしょう?」
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