純白恋夢/愛心
た。
「あんたたちは助けなかった。姫を僕から、奪い返そうともしなかった。
彼女の最後は、僕が、見届ける」
誰に言うこともなく、呟いてみる。
翼をひろげ、青空を切り裂いた。
「これが、貴女が憧れていた、世界です」
緑の山、細い水色の川、赤茶色の家々、ところどころに見える人影。
姫が、ふ。と、笑った気がした。
ぐるりと国を見渡し、姫君を抱いたまま、一番綺麗な場所に降りたった。
世界中が見える、高い高い山。
姫君を、花が咲き乱れるところに寝かせ、生えていた樹から、一番太い枝を折った。
枝を、花が咲いている地面に突き刺し、穴を掘る。
柔らかい草が、手を緑に。枝が掌を赤く
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