純白恋夢/愛心
 



くり斜め下をむいていく、彼女の、虚ろな眼。
前はこうじゃなかったのに。


時は、この前の、満月の晩にまでさかのぼる。
その時僕は、姫が飼っている、純白の羽を持つ、小さな鳥だった。
彼女はお父上の命令なのか、自分の部屋からほとんど出なかった。
そして僕を、無邪気な子供の様に、綺麗な細い指の上にとまらせたりした。
思えば、姫君にとって、僕は唯一の友人だったんだろう。
姫君は、可愛らしい声で、たまに僕に話しかけた。
内容はいつも同じだったけれど。

「お前は幸せね。私が空へ放てば、お前はどこまでも行けるものね」

悲しそうに笑い、何度も、空に放つ。
でも僕は嫌だった。彼女
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