鳥女/楢山孝介
いて殺したが
卵は既に食べられてしまっていた
猿女をいくらついばんでも
卵は戻ってこなかった
鳥男はもういない
鳥女を置いて飛んでいってしまった
それはそれで仕方ないと
鳥女は本格的に鳥男のことを忘れることにした
何しろ卵を守るために
強く在り続けねばならなかった
巣を構えた鳥女は
卵を狙って近付くものどもを迎え撃った
犬女も人女も突き殺した
それでも守りきれず
いつしか卵は失われてしまったのだが
巣を守る理由も忘れてしまっていた
卵をなくしてしばらく経った鳥女のもとに
翼を折られた鳥男が墜ちてきた
いつかの鳥男なのかはわからない
何しろ鳥女は忘れ
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