食の素描/平
「万物には形式がある。形式は必ず崩壊する。万物は崩壊する。」
(ーー吾妻滋郎著『認識の基地』序文より抜粋)
*
早い朝が来る。
カーテンを開くと、眼下のビル群を逆光に立たせた太陽がぎらりと登り始めている。
一泊二日の出張の割には良い宿に泊まることができた。
会議は昼前には終わる。
惰眠を貪れないベッド、午前中の拘束という二つの難を除けば、
旨味の多い出張だった。
傍らのデジタル時計には6:35AMの表示。
サイドテーブルには空のスキットル。
昨夜は夜半過ぎにチェックインし、
そのまま見知らぬ繁華街へ飲みに出かけた。
気がつくと自室の中でウイスキーをあお
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