ジギタリス/ピクルス
のランナーは、
俺が、
何でもないレフト・フライをエラーしたせいだ。
泣きたくなるから、歯を食いしばって、睨むような眼をする。
何の為に、たくさんたくさん練習してきたんだ、俺は、みんなは。
雨の日も、暑い日も、どんな日も。
俺は、右手で胸の御守りを強く強く握り締めた。
『どんな球が来ても、死んでも捕っちゃる』
と誓いながら。
鋭い金属音がした。
必死で駆ける俺の、
遥か頭上を
白球が追い抜いていった。
相手側の応援席の女子達が、
奇跡を見たかのように抱き合っていた。
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