暁天/榊 慧
茶色く変色した花びらがいくつも、水面に浮かんで。
緑色の変色した色が、誘う。
指先だけのつもりが、いつの間にか、体の均衡が水に向いた。
耳を叩く水音。
何処か懐かしい音がして、忘れかけていた郷愁を呼んだ。
水の中で空を仰ぐと、ゆらゆらと、茶色い花弁がたゆたっていた。
その刹那、茶色い水面から手が伸びる。
無理に掴まれて水面に押し出されるように顔を出すとそこに居た。
神様は神様らしい壮絶な微笑で、それでいて酷く残酷な顔をしながら少し楽しそうに自分を眺めている。
落ちてきた何かを受け止めきれず、水に沈む。
そのまま、還れたらと、考えた。
淡い光が降
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