暁天/榊 慧
 
が降り注ぐのを見上げていると、彼の微笑に見下ろされた。


「ほら、きれいだよ。」
彼の声を追って、上方を仰ぐと、橙に染まった群青の雲が、闇を伸ばした。
その雲間から、光が射す。



暁天。
「ほら、きれいだよ。」

郷愁が、夕闇を呼ぶ。

とくとくと、心臓の音にもよく似た、夕闇を。

それでも、その夜が明けると、彼が、笑った。


それだけで、自分は、帰れる気が、

あくまで気が、した。



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