狂った日曜日(1000文字小説)/宮市菜央
 
ック。遠い南の国で育った彼は辛いものに目がない。そして食後のコーヒーもセットする。彼の望む最高のタイミングで出せるように。
 彼は甘い空気を嫌う。なれなれしい会話を嫌う。だけど、私には違う。笑顔をくれる。キスをくれる。手を取って、頬を寄せて。

 約束の、いつもの時間。彼はまだ来ない。十分、二十分、三十分。壁時計の針が進んでいく。

 一時間過ぎたところであきらめて、部屋を片付ける。次の予定が迫っている。

 クロスを取り替え、一輪挿しに花を添える。このひとは、花や緑が好きだから。ただひたすらに甘い時間の流れが好きだから。

 彼は私の手料理が大好き。材料を広げて、不足がないかを
[次のページ]
戻る   Point(1)