書店員の一日/吉田ぐんじょう
 
ごめいている
多分昨日
言えなかった言葉の残骸だ
水を流すとだいたいの言葉が
排水溝へ吸い込まれていくが
いつも

だけうまく流れないので
指でつまみあげて外へ投げる

鏡に向かうと
知らない人が立っていることがしばしばだ
わたしはその人に
朝のお辞儀をする
その人も同じくお辞儀をする

仲良くやってゆけそうな気がする


朝はいつもゆで卵を食べるのだが
たまに母親が間違えて
ゆでていない卵を出してくる
そういう卵は殻を剥くと
ひよこが生まれてきてしまう

今日はひよこの卵の日だった

わたしはい
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