母の上空/佐藤清児
 
バス停まで迎えに行ってやれ」
とだけ言って会社に行ってしまった



バス停までは大体20分くらい歩かなければならない
家を出る時には小ぶりだった雨が次第に強まってきた
途端に、母は本当に家に帰ってきてくれるのだろうか
という想いが心の底で水溜りのように広がっていった

あめゝふれゝかあさんが…

口ずさんですぐに止めた
てるてる坊主は何の意味も無かった
母が待っていないような気がしたのかもしれない
小学校の高学年にもなって童謡を歌うのも
なんだか恥ずかしい気がした
ただ黙って
果てしなく思える一本道を
ひたすら急いだ
母の影が見えた



帰り
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