母の上空/佐藤清児
時々、台所に立っているように思えて
母の名を呼んでしまうことがあった
そんな時は必ず雨が降っていた
母は妖怪雨女なのかもしれない
そう思ってしまう時は
少しだけ悲しくなった
*
てるてる坊主を窓に掛け
あめゝふれゝかあさんが
蛇の目でお迎え嬉しいな…
小学校1年の時に習った歌を小声で口ずさみながら
明日、母が帰ってくるという突然の知らせを
弾けそうな小さな胸の内側で
ぎゅっとかみ殺していた
その日は止みそうもない大雨で
夜になっても風が弱まることが無く
結局一睡も出来なかった
その日の朝、母がいつ帰ってくるのかを聞くと父は
「今日の夕方6時に、バス
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