4月の蛇になれば彼女は 〜皆殺しの哲學〜/人間
 

理想を持たない彼女は現実について恐怖する必要も無かった
だから彼と彼女の防空壕は真空だった
思考は蝉のように素揚げされ
感情は打ち水のように蒸散し
言葉はミミズのように干乾び
想像は喉に草餅を詰まらせて窒息死した

「何にも要らない」彼女の知恵は透明な炎だったので
分別は一瞬で焼き尽くした
理想への努力や追求 達成への野心や欲望 利益への打算や画策
他人への支配や従属 隣人への依存や反抗 一角の者への羨望や嫉妬や追従
競争における勝者へ崇拝や敗者への無慈悲 全ての鈍感と無感情
観念や騙詐や偽善や自己欺瞞や妄想や逃避や冷笑や怠惰
それら過呼吸な波のように打ち寄せる様々
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