夏の恋/N.K.
 
夏の盛りの日差しを受けたので
あの家の壁はあの人の肌のように白くなり
日陰がますます地面を焦がして
午後の家並みはきりりと彫が深くなり 
空はじりじりとしてあなたへの思いのように
もどかしいほどに青く濃くなって
目に映るものすべては輝いている
恋に落ちた男女のように輝いている

手元の啓蒙思想家たちは
理性が美を統べるのだと私を啓蒙しようとするのだが
黙示録を知るはずもないアブラゼミは大量発生をして
この一瞬が永遠なのだといわんばかりに
命の限りに鳴いてる
まるで地上と恋に落ちたように

もちろんそれは林檎を地面に引っ張る力によるのでも
ヨブのような一見かたくなな
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