博士たちの受難/池中茉莉花
 
間、起きっぱなしでキーを叩く、そんなときもある。だから目覚まし用のインスタントコーヒーは必需品だ。夕食などは食堂にいく時間を惜しんで、ストックしておいたパンをかじる。冬はもらい物の小さな電気ストーブを机の下に置き、しばれた足を溶かしながら。
秀也もまた、別の研究室で泊まり込みで論文を書いている。それがお互いどれだけ支えになってきたことだろう。
 「こんなことして 社会の役に立つのだろうか?机上の空論ではないのだろうか?」
 「いや、回り回って必ず役に立つんだ。」
自問自答、そして、ふたりの対話。
博士を同時にとり、一年更新の研究員に採用されたとき、ふたりはやっと夫婦になった。新婚旅行も行
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