【小説】月の埋火/mizu K
 
、皓々と月の光が射し込んでくる。その光のなかでま
た洗い物の続きをしていると、お椀を取り落としてしまった。
 流しの水を止めると、ほら、潮鳴りが聞こえてくるでしょ
う。いつも聞こえているはずなのにね。でもそのときは、な
ぜかしいんとしていて、床に転がったお椀を見ると月の光が
あたっている――はずだったのだけれど。
 伏さったお椀には月の光があたっておらず、なのにそのま
わりの板の間は白々としていたという。不思議に思ってお椀
を取ってみると、床にころりとビー玉のようなものが転がっ
ていた。おかしなこともあるものだ、と思って拾いあげてみ
ると、ひんやりとしてすべすべとしていた。しか
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