【小説】月の埋火/mizu K
をする祖母に、私はときどき彼女の歳がわから
なくなる。小さな女の子のような笑い方。おばあちゃんなの
に。
月といえば、なんですか。
月を生け捕ったことがありまして。
あのう、いけどったって、その、いきてとったのですか。
はい。それは、そのう、李白みたいにですか。いえいえ、正
確には月の影なのですが。かげ。はい、影、つまり光です。
祖母が、今の私よりももう少し歳をとったころの話だそう
だ。夜、流しで洗い物をしていると、ふと目の前が明るくな
ったように思ったので、つと顔をあげると、格子窓のむこう
に遅い月が浮かんでいた。何とはなしに台所の灯りを消して
みると、皓
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