そして僕は絵描きを名乗る/桜井小春
 

描かなければ

ならない。

しかしそれ以来

僕は鉛筆も筆も持っていない。

下手になる

下手になる

焦りだけが

募っていく。



キャンパスは白いまま。



それから

どれだけの時が僕の上を通り過ぎていっただろう。

絵のことが胸のしこりとなっている中で

君と出会った。

君は鈴蘭のようなワンピースを着て

僕の前に現れた。

苦悩する僕を見て

花屋に駆け込むと

鉢植えにされた鈴蘭を買ってきてくれた。

そしてどんな花の美しさも劣るような笑顔を

僕に向けてくれたんだ。



僕の
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