そして僕は絵描きを名乗る/桜井小春
僕の中で何かが弾けた。
白いキャンパスに向かう。
4Bの鉛筆が軽やかに舞う。
絵の具をつけた筆が軽やかに舞う。
僕は一枚の絵を描き上げた。
君の絵。
柔らかく微笑む
君の絵。
昔の僕だったら
またパレットナイフで
この絵を切り裂いていただろう。
何せ
酷い出来だったから。
でもそこに空虚感は無く
変わりに芽生えたのは
君に対しての愛と
この絵に対しての愛。
君は僕の絵を見て
「とっても素敵な絵ね」
と言ってキスをくれた。
僕の目に熱いものがこみ上げてくる。
目の前の君と
絵の中の君がぼやけた。
僕は生まれて初めて
絵描き
を
名乗った。
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