夏についてのスクラップ/水町綜助
 
抜き通りだ
プラスチックを切り抜いただけの
花飾り
からからと回って
黄金に満たされた
街路に人はいない
どちらへいけばいいかわからなくて
聞く人もいないから
僕は西へ行った
山道は曲がりながら伸びて
森の透き間をつらぬく光は
幾何学様
切っては
はりつけられ
また、切られては
はりつけられる

光はそれでも注がれた
読み飽きた本を片手で
めくるはやさで

とじられたのは
いつか



鉄橋の下は
黒い川
精霊流しが
ちらついて
消える

生きている
ひとびとは
合わさって
天球として
夜空と町の
合間に浮かぶ

完結
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