夏についてのスクラップ/水町綜助
 
完結してしまっている町
黒い川は
そこから出るための
たった一つの道

生きながらそこから出てきた君とのこと

コオロギが
花火の残滓のきらめきみたいに
鳴く前に
終わらせなくちゃいけない

位置は
ここじゃない
どこだろう

 *

地方都市
人口約2100000人
00:25
九月二十日
2001

忘れた本を取りに行く
というから
車で送っていった
建物の裏のフェンスに座って待っていた
グラウンドの向こうは崖で
その下には夜の町が遠く見えていた
裏口からでてきて

みつかったから

というから
そのまま崖の向こうの眠りかけている町を見ていた
金網にもたれ掛かるから
僕はフェンスの向こう側に降りて
腰の高さほどの草むらに立って
僕もフェンスにもたれて
また町をみた
なにもことばはなくて
風もなかった
リーンと長く虫が鳴いて
踏んだ草のにおいがした






















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