青いテント/長谷伸太
たくさん瞬いていました。いつのまにか石段も姿を消して、私は宙に浮いたようになりました。あたりを見回すと、上の方に光が集まっているところがありました。そっちへ向って私の体はすうっと飛んでいきました。
そこにあったのは青いテントでした。夏の湖面のようになめらかで、ゆらゆら光を反射させていました。中へ入ってみると、あの花の香りがとても強く香って少しくらっとしました。すぐに大きくて立派な時計が目に入りました。奥には誰かがいるようでした。今何時なんだろうと時計を見ると、針は一本しかありませんでした。秒を刻むかわりに、そうだね、そうだね、そうだね、と相づちを打ちながら回っていました。なんだか少し苛々として
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