哀しみ皇子(9)/アマル・シャタカ
してるのかなあ
「俺たちはきっと、臆病なんだよ
だからここから出て行けないのかもしれない
俺はいままで、いろんな人を見てきたよ
それこそ愛を熱烈に語るのもから、ニヒリストまでね
でも、その多くが自分の言葉とは裏腹に敗れていく姿を見てね
俺があいつを失わずにいられる方法として、ここに住むことを考えたんだよ
だから、弱者の智慧ではあっても、愛などと呼べる崇高なものじゃない
いや、愛でなくてもいいんだ、俺にはあいつが必要なんだから」
哀しみの奴が天を仰いでいる
きらきらと川の反射が、哀しみを照らして、ぼくはちょっと、奴のことを綺麗だなとか思っちゃったよ
ねえ、太郎さん、
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