久遠/松本 卓也
 
草臥れているのはなにも
心や体だけじゃない
味気ない坂道のてっぺんが
逆光を浴びて眩い割に
気持は晴やかさからまるで

遠く遠く遠く

新聞で見かけた見覚えのある名前
すれ違う其処に居やしない表情
空耳を掠める生温い風の音
瞼と睫の隙間にちらつく笑顔
もう何もかも全てが

遠く遠く遠く

何を間違ってしまったから
隣に誰も居なくなったのかな
内臓をぶちまけた雨蛙が道端で
半ば白く変色して不愉快な匂い
近くにあるものは所詮そんなもの

寂しさを表す言葉は吐き飽きたのに
未だに満足する事もないまま
独りを楽しんでいる気さえして

一日の終わりを迎える
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