久遠/松本 卓也
 
える毎に
不確かな恐怖が増していくよう
壁を叩き布団を噛み締めて叫ぶ歌
何処にも届かないように気を遣う

取り残された小さな部屋
ヤニで微かに変色した壁に
輪郭が定かではない影が伸び

天井を支える八本の角材が
今日は随分と近くに見える
手を伸ばせば届きそうなのに

分っているけれど
手を伸ばしてしまう
掴めるんじゃないかって
それでも結局は当然

遠く遠く遠く

決して届かない

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