ウブスナ/ヴィリウ
 
が溢れていました。
貧しい日々を肩寄せ合って暮らす、カネを持たない人間達が。

あの頃は私も其の一人で、
一度だけ親から盗んだ500円が大金に思えたものでした。
親から何かを盗んだのは其れ一度きり。
理由ですか。
親も何も持ってはいなかったからです。
盗りたいような物は何も。



貴方は、あの場所を自分の作品作りの為に有益な場所と感じたのでしょう。
確かに、外側から眺める限りは、そうかも知れません。
雨だれに黒く沈むあの汚い外壁も、洗濯物が連なるベランダも、植物のプランターやゴミや玩具や廃品が溢れる通路も、
其の中で暮らしたことの無い人々には下町のようで新鮮かも知れ
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