A wandering fish/shu
 
言っていた
揺らめく波と屈折する光
水ははるか太古の懐かしい記憶を呼び起こす
「私たちは回遊魚なの」
とは彼女の口癖
オレたちはずいぶんと「永遠」に
憧れ期待し諦め退屈したりしてきた
時折彼女は流れに身を任せ
泳ぐ群れから独り離れ
想像もつかない深いところに潜っていく
それは彼女なりの新たな「永遠」探しなのかもしれない

言葉を超えて
時間を超えて
空間を超えて
生の大気圏と死の闇との狭間の
その境界にある薄い膜のようなものを突き破って
その中に泡のように溶け込んで
海綿のようにでこぼこした 
このオレの隙間に
ある日うっかり
きみは潜り込み

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