包まれる夏の風景   デッサン/前田ふむふむ
 
星条旗と日章旗をもって、酒場に手をひく。
その遥か上流から、一台の幌馬車が、
明るい色らしき帽子を被った、
若い女を乗せて、坂を流れるように降りてくる。
悪路をゆれている眼は、えいえんに開いたまま、
いつまでも、白い闇を見ている。
部厚く積み上げた、
黄砂も、波のように、あとにつづく。
1925年9月⒒日、撮影の付記が、
おぼろげに見える。

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夏を浴びた灯台のある岬で、
わたしは、立てかけたカンパスに、
遠い水平線までの、わたしの心象をてらした、
蝋燭のようなおちついた海を描いている。
やがて、燃えるような日差しが、
光度を増
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