幸せの白い兎/桜井小春
じじいのもとから
ご馳走が消え
代わりに
汚物が其処此処に。
じじいが目にも留めなかった侍女
が
兎の亡骸を抱き
可哀想に
可哀想に
と
涙を流して
泣きました。
何もかもを失ったじじいの傍には
もう誰もいません。
それなのに
毛が抜け落ちて
みすぼらしい姿になった
兎の為に泣く人がいるのです。
じじいは
可哀想なおじいさんになりました。
何も何も持っていない
可哀想なおじいさんになりました。
おじいさんは泣きました。
もう
も
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