幸せの白い兎/桜井小春
 

じじいのもとから

ご馳走が消え

代わりに

汚物が其処此処に。



じじいが目にも留めなかった侍女



兎の亡骸を抱き

可哀想に

可哀想に



涙を流して

泣きました。



何もかもを失ったじじいの傍には

もう誰もいません。

それなのに

毛が抜け落ちて

みすぼらしい姿になった

兎の為に泣く人がいるのです。



じじいは

可哀想なおじいさんになりました。

何も何も持っていない

可哀想なおじいさんになりました。

おじいさんは泣きました。

もう


[次のページ]
戻る   Point(1)