幸せの白い兎/桜井小春
 

もう

生きていけない。

儂を

儂を

誰か殺してくれ。



兎の亡骸を抱いていた侍女。

おじいさんの頬にそっと触れ

一緒にこの子を森へ帰しに行きましょう



言いました。

おじいさんはやっと気が付きました。

この温かさこそが

幸せだ

と。



幸せの白い兎

幸せの白い兎

森の

一番高い木の根元に眠っています。

おじいさんと

昔おじいさんの侍女だった女の人が

毎日

毎日

花を添えにやって来ます。



ごめんね。

ごめんね。

ごめんね。



幸せを

ありがとう。




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