哀しみ皇子(5)/アマル・シャタカ
 
結婚すればいいのに!
オジサンがいなくなっちゃったら
谷の水も枯れて、涙を宝石に変える人がいなくなっちゃって
宝石を売れない人がふえちゃって、貧しい人がよけいに貧しくなって
で、で、で
この星になにかあったときに、修理できそうな人がいなくなっちゃうじゃない

オジサンは笑っている

「皇子はまっすぐな、よい子だね」
オジサンはぼくの頭をやさしく撫でてくれた
「世の中はね、悲しみが溢れている
哀しみ、ではなくてね
みんな派手なことが好きだし
涙を宝石に変えるということの
素晴らしさなんか理解しちゃいない
宝石を売ったり眺めたり、そういうことは理解できてもね
谷に行く
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