MERKAVA/10010
えることの困難さに思いを致せば、それがどんな名前であろうと、このゴレスタン(薔薇園、花園)は奇蹟である。
だが、はじめに憶えた花の名は? わたしは花の名を識らない。花の名を識ろうとしてわたしはこの花園を歩き始めた。わたしの憶えたのがすべて隣に咲く花の名であるとして、はじめて憶えた花の名の前には如何なる花の名も未だ無く、では一体、はじめに憶えた花の名は?
何の、――誰の名を憶えたのだ?
そしてかような名に続き、あるいはその名と取り違えられて憶えられた他の名もまたすべて、一体何の名であるのか。今はもう、わたしはその名を知っている。その名は誰かを表す。そう、「君」と呼ぶことにしよ
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