「だらしないイカ」/ソティロ
 
階段を降り、野次馬に混じりイカの近くまで行った。



 イカは大きかった。まだ生きているらしく、ぶしゅう、ぶしゅうとどこからか空気の抜けるような音がしていて、体が呼吸をしているように見える。でもきっとイカには肺はないだろうな、と思った。脚は四方へ無秩序に広げられていて、全体は少し黄ばんだ白だった。かもめが上空でぎゃあぎゃあと鳴いていた。
 近くまで来ていた小学校低学年くらいのぼうず頭の子供が、
 「だっらしないイカじゃなあ!」
 と言って石を拾ってイカに投げた。石はイカに命中した。イカは反応しなかった。だらしないイカか、その通りだ、と思った。その時、
 「なっにをしとんのじゃ!」
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