若き詩人の手/yo-yo
沢山に持ち、それの美徳を女の人は皆いしくも匿して生きてゐるやうに思はれた」
と犀星独特の文章で、彼女のことを書いている。
<ね、ありゃもうだめだね。
<とてもあんなに痩せちゃっては、たすかりやうがないですね。
凍てた雪を踏んで、犀星と詩人の津村信夫が、東京の中野療養所の道造を見舞う。
<センセイ、僕こんなになっちゃいましたよ、
ほら、これを見てください。
道造はふとんの中で大事にしまっていた自分の手を、いくらか重そうにして、出してみせる。
<手が生きている間は書けるよ、
こいつが動かなくなると書けなくなるが。
と犀星は慰めるように言う。
「立原は嬉しさ
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