孤立ドールシャウエッセン/カンチェルスキス
マスターは言って、皿ごとおれに手渡した。それがメニューに載ってる正式な名前だった。一部の客からは平民ピザって呼ばれてた。おれは皿コーヒーを啜りつつ、平民ピザを食らった。フランス人トップモデルとの鮨の奪い合いに負けたことを考えてしまった。あれは悔しい勝負だった。おれが中トロだと思って手を伸ばしたものは、いつだって歯槽膿漏を患った中年男性の歯茎の一部だった。その間に、フランス人トップモデルはマグロの赤身、玉子、コノシロ、バービー人形、富士山を望む老舗名旅館なんかに次々と手を伸ばし、おれのつけ入る隙をまったく与えなかった。頭が冷凍庫みたいな気分になって何もできなかったんだ。あの女は勝負の最後で自分が入れ
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