孤立ドールシャウエッセン/カンチェルスキス
入れ歯であることを宣言した。福耳でしょ、あたし、とも言った。
口に持っていこうとした平民ピザがおれの手をすり抜けて床に落ちた。黒ずんだ板張りの床だ。裏返しになっていた。ピザトーストがどんなものかわかるやつなら、こんな場合、どんな結末を迎えるかわかるだろう。おれは床に落ちた平民ピザをめくった。まるで刑事ドラマの死体を隠したシートをめくるベテラン刑事みたいに。トーストにのってる具が離脱した。メイクを落とさず眠り翌日慌てて洗顔した後のスナック『凛』のママの顔みたいだった。トーストの表面には恐ろしい虚ろしかなかった。おれは皿にトーストを投げつけ、床に落ちた具のほうをしばらく見つめた。こうなりゃ、とおれ
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