ひとよ 昼はとほく澄みわたるので/yo-yo
 
道造は昭和十四年三月に、二十五歳の若さで死んだ。たくさんの美しい詩を残した。
道造が生涯を終えた年頃に、ぼくは新しい生活を始めようとしていた。ぼくは一編の詩も書いてはいなかった。ただ、道造の詩を愛読するひとりにすぎなかった。浅間山と、軽井沢追分の地名と、幾編かの詩の断片が、青春の熱のようにぼくの後頭部を熱くしていた。
ぼくたちは汽車に乗った。

   うららかに青い空には陽がてり 火山は眠ってゐた
   ――そして私は

夜遅く着いた軽井沢のホテルの食堂に、ふたり分の夕食だけが残されてあった。そのテーブルに向かい合って座ったとき、ふたりの生活が始まったと思った。
宿泊客がほとんどい
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