カフェにて/渡邉建志
彼女は蛇口から細く流れる水に舌をぴちゃぴちゃ言わせていた。へええ、うまいですねえ、と僕は言った。うまいでしょう、とさなえさんが言った。
僕はずっと本を読んでいた。自分は本当は何が好きなのか、何になるべきなのか、と考えていた。悩みながら読んでいると本はなかなか進まなかった。外のお客さん(まんぢうを持ち帰るお客さん)が、店の中を見て、あら、猫だ、かわいい、と言った。それから、なにか咥えている、あら、ちょうちょだ、あらいやだ、と言った。おどろいて僕は床をみると松子さんがちょうちょをくわえてそこにいた。それからちょうちょを放し、ちょうちょがばたばたとにげようとするのを前足でおさえつけ、また噛んだ。「
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